BLOG:お初にお目にかかります!

15/4/1 Up

今日から福岡営業所でコピーライターとして働いています、じょうと申します。

少しばかり、ご挨拶させてください☆

 

趣味はライブ遠征とヤモリ飼育です。

 

追っかけているバンドはDir en grey、lynch.、スリップノット、マリリンマンソン、

人間椅子、ゴールデンボンバーなど激しい系もしくはヴィジュアル系の人たち。

 

ライブの前日はカラオケで士気を高め、

当日は絶叫。

そして、好きなバンドが遠くに行ってしまうとテンションはどん底です。

今はどん底気味です。。。

 

続いてヤモリ。

レオパートゲッコーの中のスーパーマックスノーいう種類を飼っています。

ヤモリはチョロチョロするイメージがあると思いますが、砂漠に住むレオパは

おとなしくてされるがまま。動きものろのろ。

ニホンヤモリのように壁をスルスル上ることができません。

だから、とっても飼いやすい個体なんですよ♪

 

ちなみにトカゲとヤモリの違いはまぶたがあるかどうか。

まぶたがあるのがトカゲ。ないのがヤモリです。

写真をはっておきます^^

苦手な人ゴメンナサイ。。。

IMG_1531

私はコピーライターですが、学生時代は専門学校の小説作家専攻で

小説やエッセイを書いていました。

どんな小説かというと。。。

結婚相談所で頑張る女の話や宇宙人の話、鯛が喋る話などなど。変な話が多いです。

18歳の頃に初めて書いた小説、結婚相談所で頑張る女の話をはっておきます。(長いから半分)

すごーく暇な方は読んでみて下さいね!

 

それでは!

長々とありがとうございました♪

 

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「結婚と椅子取りゲーム」

 

郵便受けに入っていた白い封筒を手に取ると、和子は小さくガッツポーズを決め、今年も自分が主役になれる特別な日が来ることを確信した。白い封筒には青い文字で結婚相談所ハッピーと印刷されていた。その場で封を切ると、中には薄ピンク色の紙が入っていた。紙には今年もやります! お見合いパーティ! ゲームにくじ引き、イベント盛りだくさん! 楽しいひと時を過ごせること間違いなし! と書かれていた。和子は郵便受けの前でちょうど一年前の自分のことを思い出した。自然と口元が緩み、和子は笑みを漏らしていた。

「あら、あら、和ちゃんどうしたの?」

不意に背後から声を掛けられ和子は一瞬からだをピクリと震わせた。声の主は夕刊を取りに来た和子の母親の三枝であった。

「あらぁ、やる気のない和ちゃんに代わって、母さんが参加しようかしら。その方が参加者の皆さんも喜んでくれるだろうし」

三枝はニヤニヤ笑いながら薄ピンク色の紙をのぞきこむ。

「冗談やめてよ。真剣なんだから」

和子は強い口調でそう言うと郵便受けから夕刊を取り、三枝の腕に押し付け家の中に入って行った。

「そっか、ごめんね」

三枝はそんな和子の背中を涙ぐみながら見送った。三十代半ば、一向に結婚に結びつくような話が出ない和子を心配していたからだ。三年前に三枝は無断で和子を結婚相談所ハッピーに入会させた。もちろん和子は激怒したが、年に一度の大きなお見合いパーティだけは三枝がどうしても行けとうるさいので仕方なく行っていた。が、今年は和子の口から真剣という言葉を聞けて三枝は嬉しかった。

和子は自分の部屋に戻り、握りしめていた手紙をベッドの上に投げた。そしてイスに掛け、久しぶりに鏡に映った自分の顔を見た。比較的整った顔をしていたが、会社が休みで化粧をしていない今は別人の様だった。昨日夜遅くまでパソコンをいじっていたせいか、眼の下にはクマができ普段の半分くらいの大きさにまでまぶたが腫れていた。眼尻の小じわもくっきりしてきた。髪は寝癖でぼさぼさ、肌は乾燥して白い粉をふいていた。

「肌は手入れをしたらいいけど、さすがにこの髪の毛はないよな」

髪を指に巻きつけながらつぶやいた。

「美容院にでも行くか」

独り言を言いつつ、和子はベッドの上の手紙を机の上に広げた。切り取り線の下には参加、不参加の大きな文字が並んでいた。和子はおもむろに近くにあったボールペンを取り、参加という文字を必要以上に何重にも何重にも丸で囲んだ。

「アハハ。誰も私には勝てないわ」

そう言って和子は切り取り線を勢いよく切り取った。

 

五階建ての白いビルの二階の窓ガラスには、結婚相談所ハッピーと手作りのカラフルなパネルが窓ガラス一枚に一文字ずつ貼られている。剥げかけたピンク色の「ピ」の字を中年男が内側からていねいになおしていた。

「参加、参加、参加、次も参加。不参加の奴なんか居ると思うのか」

「課長、次」

黒ぶち眼鏡をかけた二十代位の小柄な男が中年男にさいそくする。

「あぁもう、次も参加だ。全部参加、全員参加だ。そんなに数えたかったら岡元、おまえ一人でやれよ」

そう言って課長と呼ばれた中年男は、デスクのパソコンにかじりつき参加者の顔と名前のチェックにはげんでいる岡元にむかって紙束を放り投げた。

「でも、仕事の関係とかで来られない方もいらっしゃるかもしれないじゃないですか」

岡元はデスクから立ち上がり、床に散らばった書類をかき集めた。勤務態度の悪い上司に対する怒りを抑えつつ、書類をまとめてソファーに仰向けに寝転がる中年の飛び出た腹の上に置いた。

「新入社員め、結婚相談所ハッピーなんかに入会してるような奴はどんな用事が有ろうとも来るんだよ。結婚したいからな。不参加の奴は結婚しちまった奴だけだ。十五年働いてる俺が言うんだ、間違いねぇ」

中年男は体を起こし、ソファーに座りなおすと紙束をパラパラめくった。岡元は隣に座り男の手元をのぞきこむ。不参加が見えた瞬間、十五年の働いている上司はいったいどんな顔をするだろうと期待しながら。めくっても、めくっても参加の二文字に丸が付けてあった。どれも黒のボールペンでしっかり書かれていた。中には筆のような筆跡も見られ、このお見合いパーティにかける心意気が伝わってくるものもある。そんなに結婚したいものかと岡元は疑問に思いつつ眺めていた。そして最後の一枚となり岡元は生唾を飲み込んで見守った。

「うわぁ、なんかドロドロしてますね」

誰が見ても最後の一枚は他と明らかに違っている。参加という文字の回りが今にも破れそうな位、無駄な労力で何重にも丸がつけてあった。結婚願望というものはこんなにも凶暴で暴力的なものなのか、岡元は信じられない。

「こいつは、山之内和子だな」

紙には確かに山之内和子と書いてあった。岡元はなぜ怠けてばかりの上司が名前を覚えているのか気になりデスクに戻り、や行を開く。

「山之内 和子。三十五歳で会社員。普通の方じゃないですか。あっ、課長は結構美人だから知ってるんでしょ」

パソコンの影から黒ぶち眼鏡がのぞいている。

「今年も行くから覚悟しなさい。って言いたいんだよこいつは。仕事するぞ。岡元」

そう言うと中年とは思えぬ俊敏な動きで立ち上がり、部屋を後にした。話をそらされて、状況がつかめない岡元はたじろぎながらも、後に続いた。

 

自動ドアの真上には大きなハサミがギシギシと音をたてながら開いたり閉じたりしている。パーマ液の匂いがツンと鼻につく。

「こんにちは。今日はどのようにいたしましょうか」

さわやかな営業スマイルと言うよりはぎこちないひきつった笑みを浮かべながら、女が和子を出迎えた。

「お任せで。ところでサエ、なんでそんなに他人行儀なのよ。お客さん居ないじゃない。みんな看板のでっかいハサミを怖がってんだよ」

「お姉ちゃん。しばらく来ないうちにこんなにボロボロで別人みたくなって、パッと見、お姉ちゃんだって分からなかったからさ。きったない人が来たなぁって」

サエはケープをかけ、ハサミを準備している。

「お母さんが心配してるよ。お姉ちゃんがなかなか結婚しないから。結婚相談所に入れたけど和ちゃんが怒って、話してくれないって」

鏡越しに和子の顔を見た。

「また三枝の事か。あいつは心配なんかしてないよ。恥さらしに早く出て行って欲しいだけ。なんかさ、世間にはこんなに人間があふれてるってのにさ、結婚できないから結婚相談所に行くってのはおかしいと思うんだけど。近場で済ましてしまおうみたいな感じがしてさ。願望むき出しの人が二十人位集まって、とりあえずそのへんの目があった人と願望を埋めあうみたいに速攻結婚して、離婚して、また結婚。お見合いパーティね、始まる前、今年結婚した二人の写真のスライドショーみたいなのがあるんだけど、その二人の笑顔ってのがなんか違うの。出会うべきして出会った幸せそうな笑顔じゃなくて、あぁこれで世間で恥をかかなくて済む。お互いそんなに嫌いじゃないし、ラッキーみたいな笑顔なんだよ。お見合いじゃなくてあれはオークションだよ。かっこよくて、稼ぎが良い。って打ち込んで検索。一人でた。じゃあ、あの人にしょう。奴らの愛してるっていうのは結婚願望が仕掛けた麻酔なんだよ」

和子の顔にパラパラと髪の毛が落ちる。

「みんなそのラッキーにかけてるんじゃないの。こんな近くにおんなじ気持ちのそんなに嫌じゃない人が居たみたいに。お姉ちゃんは完璧主義で一瞬のときめきに一直線過ぎるんだよ。だから、気づいてみたら不倫だったり、七時五十分発快速電車の車掌さん好きになったりするんだよ。しかも車掌も子持ち。まぁ車掌は眺めてるだけだったみたいだけど。まともに出会って恋愛したためしがないからひねくれてるんでしょ。ゲーム目当てで行くなんて冷やかしだよ」

サエは三枝の涙する姿を思い浮かべながらなんだかんだと言い訳する姉に言った。三枝がどれだけ心配して思い悩んでいるか分かって欲しかったからだ。

「お姉ちゃんが出会うべきして出会った幸せそうな笑顔第一号になればいいんだよ」

和子はただ黙ってサエの話を聞いていた。途中腹が立って来て、怒鳴ってしまいそうになったが結婚している妹の話は考えさせられた。そうこうしているうちにカットが終わった。バサバサで伸ばしっきりの髪は見事にセミロングの長さになり、まとまっていた。

「ありがとね。景品取ったらあげるわ」

サエは、自分の偉そうな言動で姉を怒らせてしまったかもしれないと思ったが、いつものように姉が感情にまかせて怒鳴ってこなかったので分かってくれたと信じ、和子の背中を見送った。

家路に着く間、和子は去年と一昨年のお見合いパーティを思い出していた。

一昨年のパーティは最悪だった。三枝に勝手に結婚相談所に入会させられた上、パーティだけでも参加してくれと泣いて頼まれた。正確には泣いたように見せかけた彼女の演技で。それでも行ってやるものか、と無視を決めこんだ所、三枝が味方にしてきたであろうサエが家族連れで帰ってきた。連日、サエと三枝に部屋を占拠されていた。

「お姉ちゃん、一年に一回だけじゃん。お母さんの誕生日プレゼントだと思って行ってよ。運命的な出会いがあるかもよ」

三枝はとなりでわざとらしくハンカチを片手に肩を震わせていた。しかし、ハンカチからチラリチラリとのぞかせる三枝の顔には涙はなく時折、ニヤリと微笑んでいるようにも見える。サエの夫と子供たちは毎日プールに行ったり、海に行ったり羨ましい位楽しんでいる。ストーカーのようにしつこく付きまとう二人に仕方なく、和子はお見合いパーティに参加することを決意した。そのかわりに、二人に二度と付きまとわない事、泣いて物事を頼まない事、勝手に結婚相談所などに入会させない事を約束させた。

お見合いパーティは和子にとって退屈なものでしかなかった。長方形のだだっ広いホテルのホールには、前の方に小さなステージがあり和子は小学校の体育館を思い出していた。まず、この結婚相談所で結婚できた人達の写真スライドショーがある。どの写真もウエディングドレスやタキシードを着てほほ笑む男女が写っていた。参加者達は来年の自分の姿を見るように目を輝かせて、自分たちもこの幸せな二人にあやかろうと食い入るような視線でスライドショーを見ている。一方、和子は一人下を向き、前に置かれたステーキのソースに浮かぶひときわ大きな油に映っている自分の顔を見ていた。和子にはソースに映った自分が話しかけてきたような気がしたからだ。

「そんな暗い顔して、言ってやればよかったじゃない。好きで不倫してた訳じゃないのよ馬鹿って。私は悪くないんだから、泣きそうな顔をするのはやめなさい。頑張りなさいよ」

ある日、妻と名乗る女が山之内家を訪ねてきた。和子は留守で三枝とサエが話を聞いて謝罪して帰ってもらった。帰ってきた和子は母親と妹に何時間も今まで考えてもいなかったことで説教され、不倫癖があるのではないかと罵られるはめとなる。その事件以降、彼から連絡はなく、真実を告げられることもなく、会うことさえなかった。不倫が発覚してから三枝とサエは一秒でも早く和子を結婚させようと計画するようになった。特に三枝は口を開くたびに嫌みを言うようになった。三枝の態度は憎たらしかったが、和子は二人を心の底から怨もうにも怨めなかった。三枝とサエは悪くない、自分が三枝やサエの立場なら同じことをするだろうと思ったからだ。この日以来、元恋人を酷く憎むようになった和子は決意する。こんな屈辱的で惨めな思いを二度としないように恋なんかするものかと。

気づけばスライドショーは終わっていて、ゲームが始まろうとしていた。

「皆さん前にお集まりください」

場を盛り上げようと男が甲高い声で明るくふるまう。

「毎年恒例の椅子取りゲームですが、今年から景品を用意しております。一等は豪華景品プラズマテレビ。皆さん準備運動をお忘れなく」

「アッハハハ」

参加者達、特に四十代後半から五十代半ばだと思われる女性が下品に手を打ちながら笑う。彼女達は好みの男性に知り合える上、景品までもらえると言うことで張り切っている。和子はその中にいる自分が恥ずかしくなった。結婚願望、物欲、あらゆる欲望をさらけ出した彼女達を心の中でさげすんでいた。いい歳を越えて椅子取りゲームなんて恥ずかしくないのか、外では決して見せられないみっともない姿だと。ほとんどの人が集まった頃、和子はのろのろと立ち上がり、自分も椅子取りゲームの輪に加わった。

「それでは皆さん準備はいいですか。ミュージックスタート」

男の甲高い声に負けないくらい間抜けなメルヘンチックな曲がかけられた。緑色、ピンク色、オレンジ色、さまざまな色のドレスが前進した。男女交互に配置されていたが和子の所だけ人数の関係でギラついたスパンコール女に囲まれた。和子の見る限り全員年上だった。ちょうど一周回った時、音楽が止められた。ほんの一瞬、糸を張りつめたような緊張が走る。和子は迷っていた。椅子が目の前にあるからだ。彼女の計画では、一回目でわざと座らず、この馬鹿らしい椅子取りゲームから抜け出すつもりだった。しかし今の位置では確実に座れる。座るか、座らないか、迷いは割り切れぬまま沈黙が破られた。

「ギャー、もらった」

向かいの黄色のドレスのおとなしそうな女が奇声をあげながら椅子に突進した。そして椅子を自分のものにした女は得意げに周りを見渡した。まるで山の頂上から地上を眺めるように。それを皮切りに止まっていた人々は我先にと近くの椅子に飛びかかる。和子も雰囲気に呑まれ、目の前の椅子に座ろうとした。和子の前に居たオレンジ色のドレスの女がこっちに向かって走ってくる。さっきのすまし顔とは一変、歯をむき出しにして頬の肉を震わせサルのように迫ってきた。それでも和子は椅子に腰を下ろした。そうして黄色のドレスの女みたいにこのオレンジ色のドレスの女を見てやろうと。座った瞬間、異様なやわらかさに和子は気付いた。椅子のクッションとは別の何かだ。でこぼこしていてうっすらと生暖かい。

「うわっ」

途端に和子は椅子から飛びのいた。尻にしかれた生暖かいなにかがピクリと動いたからだ。そのなにかの正体は和子の後ろに居た女の手だった。女は野球選手がベースにヘッドスライディングしたかのような状態から素早く立ち上がり、和子を椅子から確実に離すため背中を張り手で一突きした。押された和子は尻もちをつき、椅子の方へ振り返る。椅子には太った五十代位であろう女が座り、ニヤニヤしながら和子の方を見ていた。ピンク色のドレスが今にも張り裂けそうだ。

「姉ちゃん、あんた、ちょっと若いからってぶりっこしとんやないか。泣いたって、誰も助けてくれへんで。悔しかったら来年も結婚我慢して来ることやな。そん時はうけて立つで。アッハハハ」

和子は尻もちをついたまま考えていた。ただでさえ今日は泣きたい位つまらない一日だと思っていたのに、見ず知らずの女に尻を触られた上、突き飛ばされ、ぶりっこだと罵倒された。これ以上の屈辱があろうかと。他人に勝つ喜びと、負けて歯を食いしばるほどの悔しさを短時間に味わった和子は頭が真っ白になっていた。誰が起こして席まで連れて行ってくれたのか、はたまた自力で戻ったのか覚えていなかった。その後のプログラムでトークタイム、名刺交換と続いたが、覚えていることと言えば、ピンク色のドレスの女がプラズマテレビを獲得したことくらいだった。

帰り道、夕焼けに染められた空はピンク色だった。和子はキラキラ光る川のふちに一人ハイヒールを引きずるように歩いていた。カバンの中には覚えのない男の名刺が数枚入っている。空を見ると、空までもがあのピンク色のドレスの女の味方をしているように見えてきた。和子は腸が煮えくりかえっているのに、今にも誰かにすがって泣きたいと心のどこかで思っている自分が許せなかった。その誰かに、一番に頭に浮かんだ者が、誰でもなく憎くて仕方のないはずの元恋人だったのだ。和子は名刺を一枚一枚握りつぶして川に捨てた。三枝とサエは自分を信じてくれない、二人には何一つ本当のことを言うものか。一番頼りにしていたあの人は裏切った。あの女の言う通り、もう泣いたって来てくれやしない。世間の人達も案外冷たい。これから先の人生、一人で生きてゆかねばならない。と思いながら。これが一昨年のことだった。

それに比べて、去年は最高の年だった。今までの不幸な日々を忘れさせてくれるかのように。パーティのメインディッシュはステーキではなく白身魚のムニエルだった。前の年自分の幻覚を見ただけあってさっぱりした料理に和子はホッとした。それよりも和子の頭の中は椅子取りゲームのことでいっぱいだった。あのピンク色のドレスの女を打ちのめしてやろうと来たようなものだ。まだかまだかと待つうちに指先をテーブルに打ち付け、グラスの水に波紋ができていた。

「こんなんじゃ駄目だ。また負ける」

突然テーブルを叩き、立ち上がった女にたくさんの視線が集まる。人々のヒソヒソ話に耳を傾ける様子もなく、和子はスライドショーを後にした。

トイレの前まで来ると、和子は見覚えのある背中に我が目を疑った。

「嘘でしょ。道夫さん?」

男子トイレに入っていく男の背中はかつての恋人、松野道夫の背中にそっくりだった。とっさに男子トイレに駆け込もうとした和子の腕を誰かが掴んだ。

「あんた、やるなぁ。いくらなんでも男子トイレに踏み込むのは女としてどうかとおもうで」

「なんですか」

激しく腕をはねのけ、振り返る。そこには去年と全く同じピンク色のドレスに身を包んだ女がいた。

「あぁ……あなたは」

見開いた目で女の顔を見続ける。和子の目には困惑した様子の女の姿が鏡のように映っていた。

「なんや、いかついねぇちゃんやな。めぇ悪いんなら眼科に行くことやな」

ピンク色のドレスの女は、あきれたようにそう言うとテーブルに戻って行った。残された和子は複雑な心持ちだった。あの女が邪魔さえしなければ、もう一度、道夫に会えていたのかもしれない。という女を憎く思う気持ちと、いまだに道夫の残像に呪われたかのような自分を止めてくれ、目を覚まさせてくれた。という女に感謝する矛盾した気持ちが葛藤していたからだ。トイレから出てきた男は、松野道夫に全く似ても似つかない別人だった。むしろ正反対の痩せこけた若者だった。若者は和子の視線に気づき、ブツブツとつぶやき、何か言いたげだったが隠れるようにそそくさと去っていった。

「彼女が居なかったら、私は本当に変質者になるとこだったわ。だいたいあいつは妻子持ち。生きているのか死んでいるのかも分からないなら、死んだことにしてしまおう。とっくの昔に」

二度と道夫を思い出すものか。と心に誓い、席に戻った。

「皆さん、前の方にお集まりください。毎年恒例椅子取りゲームでございます。一等は豪華景品、ホームシアターとパソコンのセットです」

妙に明るい男の声が響いた。参加者達はほとんど去年と変わっておらず、椅子取りゲームの要領も分かっているらしくぞろぞろと前に出て輪になった。

「それでは準備はいいですか。ミュージックスタート」

陽気なメロディーに合わせて一歩一歩進むうちに和やかな空気が殺気立ってくる。和子は自分に言い聞かせ続けた。ホームシアターを手に入れれば恋人ができると確信したようなこいつら蹴散らして、あの女を倒す、そうすれば絶対気も晴れるはずだと。半周もしないうちに音楽は止められた。一瞬の沈黙を破ったのは和子だった。

「やったぁ」

和子の周りの椅子は焦った人々で争奪戦になったがすぐにうまった。椅子に座れたものはホッとしたのか胸をなでおろし、座れなかったものはその場にはいつくばり、名残惜しそうにこちらを見ている。はいつくばったもの達は去年の和子のように係員によって席に戻され、なにもなかったようにまた陽気な音楽が流れる。出会いの場であるお見合いパーティであるのにもかかわらず誰も目も合わさない。視線は椅子に集中し、強ばった表情で前進するだけ。そんな中、和子はいら立ちを隠せなかった。前を歩くタキシード姿の男が出来るだけ椅子の近くにいようと歩幅を調節しているからだ。

「なんってみみっちい男」

和子が呟いた声に重なるように音楽は止んだ。誰もが一番近くの椅子を睨んだ。しかし和子は自分の横にも椅子が有るのにもかかわらず、前の男の横の椅子を見ていた。男が座ろうと腰をかがめたとき、和子は椅子の背持たせに手を掛け少しだけ自分の方へ引き寄せた。そして椅子の半分に腰かけた。もう半分に座った男は、あり得ない先客に驚き立ち上がって振り返る。そこには椅子をすべて占領した和子がほほ笑んでいた。

椅子の周りを何周した頃だろうか、脱落者達は談笑しながら料理を楽しんでいた。前では熾烈な戦いが繰り広げられまた一人、また一脚と景色はさびしくなっていった。ついに椅子が一つになり陽気な音楽に合わせて前進しているのは和子とピンク色のドレスの女だけになった。ピンク色のドレスの女はディフェンディングチャンピオンなだけあって堂々としていて笑みさえもこぼしていた。それに比べ、挑戦者的な立場の和子は、ひたいから汗が流れおち緊張の色が隠せない。椅子が近くなるたびに早く音楽を止めてくれと願っていた。和子の思いとは裏腹に、ゲーム大会の司会兼ラジカセ係の男はオーバーな身振り手振りで音楽を止めようか止めまいかもったいぶっていた。この意味のない動作を満面の笑みでこなす男に和子は憤りを感じていた。まだかまだかと、たくさんの目が男に集まっていく。男は人々の目を気にすることもなく後ろの係員に声をかけられたのかいきなり後ろを振り返った。その時、男はストップボタンを押した。誰もが予期せぬタイミングに戸惑い会場がざわつく。音楽が止まった時、和子の中の男への憤りはピンク色のドレスの女へと向けられた。椅子の正面に位置した和子は椅子の背後の女から椅子を引かれないように正面から抱きかかえるようにしてしがみ付いた。予想とおり、女は椅子を力いっぱい自分の方へ引き寄せた。

「せこいわよ」

「あんただってさっき使ったやんか。見たで。自分のこと棚に上げてなんちゅう女や。だいたい男子トイレに間違ってはいるような奴に言われとうないわ」

椅子の引っ張り合いが始まった。

「離しなさい。ホームシアターがあったところで」

年の割に女の力は強く、女より二十は年下であろう和子は引きずられていた。

「もう」

耐えられず手を放すと女の表情はゆっくりと緩む。しかし、いきなり手を放された椅子と女は反動から後ろへ飛ばされていった。うあぁ、とうめき声にも似た悲鳴とがらがらと椅子が転がる音が響いた。

「取らなきゃ」

和子はすかさず転がった椅子を起こし、腰かけた。

「座りました。絶対座りました。私、山之内です。山之内和子です」

和子の目には光るものがあった。そして椅子に座ったままゲーム大会の司会の男の方を見つめた。

「あ、ああ、おめでとうございます。豪華景品は山之内和子様が獲得なされました」

半ば二人の気合の入りようにあきれ気味で食事を楽しんでいた人々は手を止め、拍手で和子を迎えた。この時の高揚した気持ちを和子は忘れる事が出来ない。雪辱を果たし、誰もが祝福のまなざしを向けてくれた。いくら髪が乱れていても、ドレスのすそがほつれていても、汗でアイシャドウが流れ落ち顔を光らせていても、過去に不倫の経験が有ったとしても。小学生の運動会で一等賞を取って以来忘れてしまっていた自分で勝ち取った本当の勝利を思い出した和子は、自分が主役の素晴らしいこの一日が永遠に続けばどれほど良いかと思った。ホームシアターセットを抱きかかえて一人歩いた帰り道、和子には夕日のピンク色も自分をお祝いしてくれているように見えた。

 

つづく

 

 


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